きょうも一日が終わる

きれいなものをきれいな文章で切り取りたい。

思い出すことは愛すること

苦しくてやさしい年になりました 最後の積み木は灯油の匂い


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一年が終わろうとしていることに驚く。終わりが見えないような一年であったから。
もう、振り返りも面倒な程に曖昧で大量な年。毎日、背の高い雑草を薙ぎ倒しながら進んできたような気分。
RPGで言うなら、まだレベルが足りなくて、地図の大部分は靄で隠れている状態からスタートしたようなものだ。
目の前に繰り出す敵を地道に倒しているうちに、いつの間にかレベルが上がって、ちょっとだけ地図の先が見える。新しい街に行ける。でも最終目的地はまだわからない。だから今日も地道に敵を倒す。
そう、まだ途中だから、振り返りはまだ出来ない。


廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは
笹井宏之『えーえんとくちから』
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最近、笹井さんの歌集『えーえんとくちから』を読んだ。
付箋を貼りながら読んだら、沢山の色の付箋で一杯になって、黄色と灰色の表紙の歌集が、少し暖かくなった気がした。
すごく淋しくて、だからこそ優しい人の歌だな、と思う。
読後感もなんだか物寂しかった。
語り口調で、淋しい心と目に止まった風景を伝える、そんな歌たち。
歌以外に、心に止まった一言がある。後書きの「無題」から
「きれいごとのはんぶんくらいが

そっくりそのまま
しんじつであるといい」
これは、真実だな、と思う。このように思う心が真実。
淋しさも、優しさも計りきれないことが殆どで、人の淋しさを認識出来なかったり、優しさを刃として振るったり、それは世の中の事実として受け入れつつ、わたしが思う綺麗事が、真実でありますように。


最後の積み木を手にして、道半ばな一年を終えます。
苦しくてやさしい年になりました。
ありがとうございました。