きょうも一日が終わる

きれいなものをきれいな文章で切り取りたい。

アイドルという職業

アンジュルムの田村芽実さんが卒業を発表しました。


http://s.ameblo.jp/angerme-amerika/entry-12108597517.html
「私の素直な気持ちは、ホームページに掲載されているように、ミュージカル女優を目指し、歌を一生歌っていける人間になることです。」


活動停止を決めたberryz工房、作詞家になるといってアンジュルムを卒業した福田花音さん、「一人の人間として強く生きていくために」と卒業を発表したモーニング娘。'15の鞘師里保さん、そして田村芽実さん。
2015年はハロープロジェクトのファンにとって本当に辛い年になりましたね。
もちろん、卒業は悲しいだけじゃない、それは本当です。
berryz工房の7人はそれぞれの得意分野で活躍を続けている。福田さんも「卒業は悲しいだけじゃない」を体現すべく頑張るのだと言いました。
それでも、ひとりのファンとして、彼女たちの卒業は身に沁みて悲しい。


それは、彼女たちの人生はわたしと切り離されたところにある、という当たり前のことが明確になるから。


それは、本当に当たり前のことで、アイドルもその他の芸能人もスポーツ選手も、突き詰めて言えば友人もどんな人だって、別の人間で別の人生を持っていて。
だからどんなに応援したって、最後の最後に他人の人生に関わることは不可能なんです。


それでもアイドルは、本当に不思議な職業で、自分の夢をファンと一緒に成し遂げようとしてくれます。
アンジュルムの和田彩花さんは念願のホールツアーを、「わたしたちの夢であり、ファンの人たちの夢でもある」と言ってくれました。だから達成できて嬉しい、と泣いてくれました。
juice=juiceの宮本佳林さんも、アイドルという職業をファン込みで語っていました。


http://s.ameblo.jp/juicejuice-official/entry-12107372303.html

アイドルは
歌手でもダンサーでも女優でもなくて、
でも全部出来るに越したことはなくて。
どんな風にもどんな形にも成長できる。

その成長をいろんな方に
見守ってもらえる。


もちろん、これらの言葉にはいくらかのリップサービスもあるはずだし、そこまでファンに献身的であれ、とも思いません。
でも、アイドルが他人であるファンを含めて夢を語ってくれることで、わたしたちはアイドルの中に自分を見ることが出来るのだと思います。
それは、「一緒に○○を目指そう」というものから、「あの子も頑張っているんだから私もがんばろう」というものまで。
突き詰めるとアイドルという職業は、芸でなく自分自身を見せてくれる、売ってくれるものだと思うのです。
多分、それはものすごくアイドル自身を擦り減らしていくはずで、だからアイドルという職業は罪深いとも思います。


新たな夢を見つけてアイドルを卒業していく彼女たちは美しいし、出来るなら応援したい。
でも、もうアイドルでない彼女たちを応援したいと思った時、今までと同じ方法では出来ない、と思います。
彼女たちはもう、アイドルのように自分自身の夢の中にファンを入れてはくれない。
わたしたちファンは、一般的な他人に対するように、傍観者として応援するしかない。
それは、やっぱり、どんなに罪深くたって悲しいことです。


ーーー
常々、SMAPや嵐のような女性アイドルが見たいと思っています。
なぜ、女性アイドルは卒業していってしまうのだろう、そう思います。


嵐の二宮くんがアイドルという職業についていくつか言葉を発していて、そのいくつかを拾い読むたびに、アイドルという職業の切なさを改めて感じます。


「オレたちの仕事は、目指している明確な何かがない。毎日、同じことをやるわけではないから経験を積み重ねる感じでもない。昔は突然、新しい現場で台本を渡されて、急にホン読みなんてこともあったから、今より厳しかったかもね。求められるのは、持続力より反射神経。何ごとも『できない』って言わないこと。」


「アイドルは、自己実現するためだけの仕事じゃない。他者に求められることで成り立つし、その期待を超えることで次につながっていく。これって、ほかの仕事にも通じるよね?今は、求められることのありがたさがわかる。」


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自己実現」を良しとするような昨今に、彼のような考えを持つ人は少ないはずです。
特に若者、その中でも芸能界にいるような強い自己を持つ人は。
もちろん、彼の発言の背景には、多くの他者に求められているという大前提がある。
彼はアイドルの枠にいながら、芝居も歌もバラエティもできる。
でも、もしハロープロジェクトのアイドルに、それだけ多くの仕事があったら卒業しないか、と問えば、その答えは否なのだと思います。
人気の絶頂で辞めていった女性アイドルも多い。


女性アイドルはみんな、アイドルの中には無い「次」を見つけて、そこを目指します。
二宮くんのように、「自己実現するためだけじゃない」と言えるだけの吸引力が、女性アイドルという職業には無い。
だから彼女たちはファンのためでなく、他人のためでなく、自分のために、アイドルの「次」に行くのだと卒業していく。
その「次」には不特定多数のファンはいない。
今まで一緒に見せてくれた沢山の夢は、思い出となって過去になる。


大好きなアイドルの卒業を目にするたびに、わたしたちファンは、
他人の人生には関われない自己に直面せざるを得ないのです。