「だってまだAが納得してない」
合意形成って本当に本当に難しい。
でもすっごく大事なこと。
楽しく生きたいように生きていくためには、他者の「生きたいように生きたい」を認めないわけにはいかない。
そんな相反する各人の欲望を、どうやって合意へと持って行くのか。
大人だって難しい、その方法を模索しています。
ーーー
給食の時間、同じ班のAくん、Bくん、Cくん、Dさんは話し合いをしています。
議題は遠足のバスの席割り。
班の中で2人組を作るのに、誰と誰が隣になるかでモメているのです。
BくんとCくんは隣に座りたい。
一方Aくんは女子のDさんの隣は嫌だと思っているようです。
DさんもそんなAくんの気持ちを察しているの様子。
Bくん「さっきジャンケンで決めたじゃん。オレとCが隣。AとDが隣。」
A「だって、そんなのズルイよ」
C「なんで?」
A「決め方おかしいし」
(ジャンケンで勝った人が隣になりたい相手を選ぶ、という決め方に納得がいっていない様子)
B「これでもう決定って言ったじゃん。だから決まりだよ」
D「でも、その決め方で良いかどうかAが納得していないうちに決めちゃったじゃん」
(これ、いい言葉。)
D「A、決め方に納得してないんでしょ?」
A「うん」
B「じゃあ、もう1回やればいいんでしょ。A、さっきの決め方でいいよね!?」
A「…うん」
(勢いに押されてちょっと頷いてしまう)
(ジャンケンの結果、やはりBとC、AとDという組み合わせに)
B「はい、決定!」
A「そんなのズルイよ」
B「だってこの決め方でいいって言ったじゃん」
A「言ってない」
(やはり合意形成できず)
A「じゃあ、行きと帰りで組み合わせ変えればいいじゃん。そしたら平等だよ」
B「オレはそれじゃ嫌だ」
C「オレもそれはちょっと面倒くさいかなぁ」
A「なんで。オレのやり方が一番平等だよ」
B[でもオレはそのやり方じゃ納得しない」
A「オレもBの決め方じゃ納得しない」
B「でもAのやり方に納得してないのはオレとC、オレのやり方に納得してないのはAだけだろ」
(ここで「納得してるかどうかって多数決で決めていいのかな」と私が口を挟む。思案するB)
(引き続き話を整理しつつ私が口を挟む。「誰とペアになるか」で全員が納得することは難しい。でも「ペアの決め方」で全員が納得できるものはないか、と提案。Cが「確かに}と一言)
ーーー
ここで給食の時間が終わってしまい話はうやむやに。
時間にしておよそ10分。
この場面で私が取り得る最善の在り方って何だったかなぁ。
Aが納得していない点っておそらく二つあって、ひとつは自分以外の男子ふたりがペアになり自分が女子のDとペアになること。
もうひとつは「ジャンケンで勝った人がなりたい相手を選ぶ」という決め方。(自分以外の男子はどう転んでも自分を選ばない、という状況を招いてしまう)
だから、「ペアの決め方で全員が納得できるものはないか」という提案は、状況の整理であるとともに、少し誘導的な発言だった。
グッパーで相手を決める、あみだくじで相手を決める、などの偶発性に頼る決め方のほうが納得いくものになるのではないかと思ったからだ。
成長したなぁと思うのは、ここで「ふざけんなよ」「バカ」といった挑発の言葉が出なかったこと。
AもBも自分の欲求を主張しているものの、(危ういけど)力ずくで主張を通そうとはしていない。
Aが行きと帰りでペアを変えるという第三案を出したこと、
Bが「納得してるかどうかって多数決で決めていいのかな」という私の言葉に思考をめぐらせたこと。
Aに隣になりたくないと言われたDが「Aが納得していないからもう一度決め直そう」と言えたこと。
どれも合意形成に必要な力。
もうひと押し、もうちょっとだと思ったんだけどなぁ、全員が納得できるバス割り。
ちょんせいこさんの「ホワイトボードミーティング」とか、紛争解決のためのファシリテーションとか、
合意形成のための方法をもっと学ばないといけないなぁと感じた一コマでした。